心ちゃん殺害事件から３年。
山室橋に、カーンカーンという
釘抜きを打つ音が響く。
誰かが作ってくれた献花台。

撤去するのは
僅か３年で娘の命を奪われた両親。

自分達で作った訳じゃない。
しかし、
通行の邪魔になると心ちゃんに
苦情を言われているようで辛い。

３回忌の節目で撤去の決意。

遺体を遺棄された現場で
パパとママが壊していく献花台。
「地獄の入り口」という現場で
１枚１枚ベニヤ板を剥がす姿。

なんで両親が
こんなことをしなければいけないのか。

二人が撤去を終えたその瞬間、
1羽の白い鳥が川から飛び立つ。
「心が見にきてたんだね」と
鳥が見えなくなるまで見つめる姿。

その方向は、
あの日、数時間前に心ちゃんが
ひな人形を作った保育園の方向。

幼女誘拐…心ちゃんが行方不明となったその夜に
記者としてリュックの男を知った雛祭りの夜。
「絶対どこかで監禁されて生きている」と
奔走したあの日から３年。

「子供たちが幸せに暮らせる世の中を
作るための報道をお願いします」

献花台を撤去した両親は
報道陣に深々と頭を提げて言った。

「絶対にこの仕事を続けてやる」と。
記者になって７年。
こんなに強く思ったことはありませんでした。