解体開始から半年 熊本城宇土櫓の復旧工事に密着
熊本地震で壁にひびが入ったり建物が傾くなどの被害が出た熊本城宇土櫓。
約100年ぶりとなる建物すべてを解体しての復旧工事が行われています。
解体開始から半年、工事の最前線を取材しました。
創建当時からの姿をとどめ国の重要文化財に指定されている熊本城宇土櫓。
2016年の熊本地震で建物が傾くなどの被害が出て復旧に向けた解体工事が進められています。
【郡司 琢哉 アナウンサー】
「宇土櫓の工事の状況としては解体が始まって半年くらいがたったところですかね」
【熊本城総合事務所 復旧整備課 陣田 武史 さん】
「半年すぎたところですね。上の方から解体してて今一層目の瓦の解体を始めようとしているところです」
宇土櫓は「三層五階櫓」。解体は上から始まり現在は一層目の瓦が外されていきます。
【郡司 アナ】
「今崩している部分というのは崩しても大丈夫な部分?」
【陣田さん】
「はい、再利用できないところです」
【文化財建造物保存技術協会 久保 亮介 技術主任】
「壁に塗っている白い漆喰に砂を混ぜて、もう少しボリュームを持たせて瓦の土台というか瓦を据えるための地を作っている材料です」
【郡司 アナ】
「再建するときにはそれからまた作ってとなるわけですね」
この日、解体されていたのは隅棟(すみむね)と呼ばれる屋根の四隅にできる山形の部分とそこから続く鬼瓦。瓦に傷をつけないよう慎重に漆喰をそぎ落とします。
そして…。(鬼瓦が外される)
【郡司 アナ】
「大きいですね。裏側がこういう状態というのは分かっていたことではあるんですか」
【久保 さん】
「一般的な形ではあります。鬼の後ろに銅線を引くための取っ手のようなものがあって」
【郡司 アナ】
「これは?」
【久保 さん】
「銅線なんですけど何本か細い銅線を撚(よ)って太めの銅線にして、基本的に鬼瓦は傾いた状態で取り付けるのでこれが倒れていかないように引っ張るための銅線です」
そして瓦によって知ることができる情報もあります。
【久保 さん】
「昭和・・・28年かな」
【郡司 アナ】
「昭和28年(の改修)もあるんですか?」
【久保 さん】
「そうですね昭和30年代に修理している(記録)のもあるのでこれが昭和28ですね」
【丸宗瓦 末吉 真也 代表取締役】
「改修した年がだいたい分かるんですね。こうやって瓦を調べていくと建物の歴史が瓦で分かってくるんじゃないかと」
外された瓦はひとつひとつに場所が記されたテープが貼られています。
ちなみに「SE」とは櫓の南東側であるという意味です。
そして一枚一枚瓦をたたいて割れていないかを確認し使えるものと使えないものに分けられます。
また、再建に向けて記録を取る作業も同時に行われていました。
【丸宗瓦 坂本 匠 さん】
「上に書いてあるのが見えてた(瓦の)枚数で下に『+1』とか『+3』とかあったりするんですけどこれは、漆喰で見えなくなってしまっているところがあって、それを解体したあとにまた数えるという」
【郡司 アナ】
「じゃあ『+1』と書いてあるものは上から見えているものから外したらもう1枚ありましたよってことですか」
【坂本 さん】
「そうです」
それにしてもこの階の東面だけで65筋の記録を取るというだけでも気の遠くなるような作業です。
こうした瓦や壁の解体が終わった二層目と三層目はすでに柱や梁といった軸組だけの姿になっていました。
そして、この三層目の足場には外された瓦がサイズごとに並べられていました。
大きさを揃えることにも意味があるようで…。
【陣田 さん】
「同じ深さの物を葺いていかないとすき間が出ちゃう瓦と瓦の継ぎ目のところに。すき間が出来ちゃうと踏んだ時に瓦が割れちゃう可能性がある。ですのでできるだけすき間がピッタリ埋まるようにサイズ分けしています。実際葺かれるときはこういうふうに葺かれますね」
瓦は再び屋根に乗る日を静かに待ちます。
【熊本城総合事務所 復旧整備課 陣田 武史 さん】
「これから秋から冬にかけて一層目の瓦と壁を解体していって今年中には軸組の状態になるように作業を進めています。(一般)公開を毎月一回させていただいていますけどそのたびに新しい姿が見えてくると思います」
宇土櫓の復旧完了は2032年度の予定。築造当時の姿をとどめる城内唯一の五階櫓は解体から、設計、そして再建へと歩みを進めます。