デジタルアートとセンサーを活用 子どもたちのために開発進む『デジリハ』【熊本】
デジタルアートとセンサーを活用した新しいリハビリテーションツール、『デジリハ』。障害のある子どもなどのために開発され、すでに熊本県内でも導入している支援学校や施設があります。この『デジリハ』に込められた思いに迫ります。
熊本市で9月に開催された『日本小児在宅医療支援研究会』。医療的ケアが必要な子どもを取り巻く、さまざまな課題について意見が交わされました。
会場に並ぶ医療・福祉関連機器の中に『デジリハ』がありました。
『デジリハ』はデジタルアートとセンサーを活用した新しいリハビリテーションツールです。手や視線の動きをセンサーが感知して、さまざまなゲームができます。障害のある子どもなどが興味を持って、自発的に体を動かし、楽しみながらリハビリに取り組めるようにと開発されました。
【来場者】
「うちの施設に通っている子供たちにもすごく使えるなと。ちょっとした手の動きで遊ぶことができるので、すごくいい」
「肢体不自由の子たちはどうしても指しか動かなかったり、視線だけの子供たちとかが多いので、ちょっとした動きで反応できるセンサーがすごく使えるなと感じました」
「革新的なICT(情報通通技術)とリハビリの融合というか、今までにないリハビリの形で、子どもたちの成長を見たいなと思いました」
【デジリハ 営業戦略部/作業療法士 小山田 智美さん】
「障害のある人は特性がさまざまなので、いろいろなセンサーでわずかな動きを拾ったり、手の動きや全身運動など幅広い動きに対応できる点にすごく興味を持ってもらえていると感じています」
熊本県内にこの『デジリハ』をすでに導入している施設があります。荒尾市にある『重心児デイ あるふぁ』。ことし6月にオープンした重症心身障害児や医療的ケア児のための通所施設です。熊本で初めて『デジリハ』を導入しました。
【重心児デイ あるふぁ 山下 須美子 代表】
「とても喜んで楽しんでやっています。我々スタッフもさせていただいて、こんなふうになるんだと見せてもらって。倫理的にお坊さんに物を投げるのはどうなの?いいのかなというのは教育的にありましたが」
【デジリハ 岡 勇樹 代表】
「ちなみにお坊さんと作っています、あのアプリ。訪問看護ステーションを経営しているお坊さんが『お坊さんにいたずらをするなんてありえないから、そんなアプリを作りたい』と言われて、大丈夫かと思いながら作りました」
東京に本社を置くデジリハ。代表の岡 勇樹さんたちは7月に熊本を訪れていました。
開発のきっかけは、福祉事業を展開していたNPO法人時代、スタッフの筋ジストロフィーを患う子供が、泣きながらリハビリをしている動画を見たことでした。
【デジリハ 岡 勇樹 代表】
「本人がやりたいものではないことをずっとやらせないといけないことがすごく親としてもつらいし、本人もつらいみたいな話を聞いて。であれば、やりたいものに変換すれば誰もつらくないじゃんというシンプルな発想で。じゃあ、リハビリの動きを何かしらゲーム的な要素を掛け合わせて本人がまるで遊んでいるかのようなリハビリプログラムが作れればいいんじゃないかということで始まりました」
当時、福祉と音楽、ダンスをかけ合わせたイベントを手がけていた岡さん。デジタルアートの空間で子供たちが熱中する姿を見て、リハビリとの融合を思いつきました。
【デジリハ 岡 勇樹 代表】
「楽しそうに動くという状態がありつつ、リハビリでは動かされているとか動くとつらいみたいなところがあったので、それをガッチャンコすれば、もっと楽しくリハビリができるんじゃないか」
岡さんは、障害のある子どもなど当事者の家族と作業療法士や理学療法士など医療・福祉の専門職で構成する開発チームを立ち上げました。
同世代の子どもたちの意見も取り入れ、2019年から試験運用を開始。
2021年からサービスを提供し、10月の時点で全国約100カ所の病院や放課後等デイサービス、特別支援学校などが『デジリハ』を導入しています。
熊本県立小国支援学校は7月に導入しました。目で見た情報に合わせて体を動かす機能のトレーニングに活用しています。
【デジリハ 岡 勇樹 代表】
「子どもたちがアプリを自分で選ぶとかセンサーを使っている時に普段は猫背になっている子がピッと視線を伸ばしてやっているとか、やっぱり生のああいう姿を現場で見れるというのが一番幸せというか、うれしいですね。僕ら開発側が考えてもいなかったような活用方法を各現場の方たちがしてくれていて、本当に工夫力のある学校とか先生がより子供たちにアプリをフィットさせていくことができているので、工夫できる余白みたいなことを結構、大事にしている感じですね」
【熊本県立小国支援学校 竹永 真也 校長】
「今後は主に自立活動の指導の中で、心の安定の部分とか順番を待ったりとか、いろいろな形で可能性が膨らむかなと思っていますので、そこで活用していきたいと思います」
熊本大学病院に岡さんたちの姿がありました。
『デジリハ』は、信州大学などと共同研究に取り組んでいて、今後、全国の大学にも広げていきたいと考えています。
【統括医療的ケア児等コーディネーター 宅島 恵子さん】
「自宅が一番長い時間を過ごしているから、自宅で使ってもらわないと意味がないんです」
デジリハは施設だけではなく、家でも使えます。遠隔でのリハビリ支援やデータの活用が可能です。
【熊本大学病院 小児在宅医療支援センター 小篠 史郎 副センター長】
「かなり未来を感じましたね。指のちょっとした動きを簡単にデータとして取れるのは研究にも使えますし、すごく今、未来を感じています。いろいろ研究計画が頭の中でグルグル回っているようなイメージです」
6月、東京に全国の特別支援学校の校長たちが集まりました。
ステージで『デジリハ』を説明する加藤さくらさん。筋ジストロフィーを患う娘の真心さんの泣きながらやっていたリハビリを何とかしたいという思いが『デジリハ』を生みました。
【デジリハ 事業連携室 加藤 さくらさん】
「まさにデジリハを届けたい子どもたちが通う学校、その先生たちに届けられたことはとても大きな一歩だなと思っています。もしかしたら(先生たちの)頭の中にこの子に使えるかなとか、子どもの顔が浮かんでいるのかなと思いながら、伝えていました」
【熊本県立熊本かがやきの森支援学校 冨永 佐世子 校長】
「子どもたちの動かせるところは本当に小さいところしかないんですが、そこから可能性を広げることができる『デジリハ』だなと思いました」
デジリハは全国の特別支援学校に対し、アプリの無償提供を始めました。世界中の子どもたちに届きますように。デジリハの願いです。
『デジリハ』は10月14日(月・祝)と15日(火)に熊本市中央区の市民会館シアーズホーム夢ホールで体験会が予定されています。詳しくは『デジリハ』のホームページをご覧ください。