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現役最年少「迫力と興奮を届けたい」県立熊本高校出身の活動写真弁士・尾田直彪さんの熱演!

前無声映画を上映し、場面を解説しながら登場人物のセリフをしゃべる活動写真弁士。現役最年少で活躍しているのが県立熊本高校出身の尾田直彪(おだ・たかとら)さん24歳です。生の語りを楽しんでもらおうと奮闘する姿を追いました。

(活動写真弁士 尾田 直彪さんが練習している)

無声映画を上映し、場面を解説しながら登場人物のセリフをしゃべる活動写真弁士。『活弁士』とも呼ばれ、現在、全国で約20人いるといわれています。

現役最年少の尾田 直彪さん、24歳。県立熊本高校出身です。

【尾田 直彪さん】
「東京に出て、大学のサークルで芝居を始めたんですけど、映画とか映像関係の表現もすごく魅力的だなと思うようになり始めて、古い60年代、70年代ぐらいの日本映画にものすごくはまって、こういう古い映画と自分のやりたい表現の道とどっちもできる道はないかなと思っている時に、溝口健二監督の映画『瀧の白糸』を見に行った時に活弁がついていて、こういう芸能があるんだと初めて知って、これは絶対やりたいと思って」

思い立った尾田さんはすぐにマツダ映画社を訪ねました。

【マツダ映画社 松戸 誠 代表】
「弁士になりたいという変わった子は結構いるんですけど、その中でも非常に積極的でしたね。練習してきて、『ちょっとここやるから見てください』みたいな。明治29年に日本に映画が入ってきた時から、活動写真弁士がいたわけです。フィルムも1分とか2分しかなくて、それをより見せ物にするために、機械の説明とかいろんなことをして口上遣い的なところから、活動写真弁士は始まっているわけです」

全国各地の映画館にそれぞれ人気弁士がいて、最盛期で8000人ほどいたといいます。明治44年に開館した熊本最初の映画館『電氣館』の創設者である窪寺 喜之助さんもかつては活動写真弁士だったそうです。

【マツダ映画社 松戸 誠 代表】
「いわゆる〈会いに行けるアイドル〉だったわけですよね」
(アイドルですか)
「だから、人気がある弁士はそれこそ時の首相よりも月給が高い弁士もたくさんいた」

尾田さんの台本は手書き。弁士それぞれが独自の感性で場面の説明とセリフの言い回しを考えます。ライブの語りで迫力と興奮をいかに楽しんでもらうか。そう思って準備に当たりますが、大学4年生のときの初舞台はそんな余裕はなかったといいます。

【尾田 直彪さん】
「ほとんど本番のときのことは覚えてないんですです。ただ緊張して、口だけがしゃべっている状態で、もう何がなんだか分からず、本番を終えて〈どうだったんだろう〉と」

【マツダ映画社 松戸 誠 代表】
「いろいろなものを見て吸収して、経験を積んでいくことが大事。一生懸命やっていますよ。いろいろなことにチャレンジして、大したもんだなと思っています」

(尾田さんの練習)
「それは本当か!」

(去年8月24日・熊本市中央区/長崎次郎喫茶室の店先に上映会の看板を出す尾田さん)
(自分で書いたんですか?)
「はい。これは毎回、こんな感じでやりますね」
(写真を撮る)

去年8月、熊本市中央区の長崎次郎喫茶室に尾田さんの姿がありました。尾田さんは自主上映会を毎月、開催しています。ふるさと熊本での開催はこれが4回目。いつも実家の家族が手伝ってくれています。

【尾田 直彪さん】
「今、考えたら、ちょっと変な子どもだったかなと思います。小学校の頃ですけど、(テレビの)サスペンスドラマにすごくはまった時期があって、自分で台本を書いて、自分で教室でやるみたいな。とにかくこれを自分でやりたいみたいなのはその頃からあったんじゃないかなとは思います」

【父・彦(まさる)さん】
「しゃべるのは好きだったみたいで、歌と音楽と。たぶん表現者になるんだろうなとは思っていたんですけど、まさかこういう感じになるとはですね、熊本の地域で育ててもらった子なので、ちょっとでも恩返しに来ているのは、父親としてうれしいなと思います」

【尾田 直彪さん】
「自分一人で公演するときは、受け付けも自分で一人でやりますから。ギリギリまで何かをしていることが多くて、そこからパッと舞台に出ていくことが多いです」
(きょうみたいに家族が手伝ってくれると)
「ありがたいですよ、本当に」

【尾田 直彪さん】
「毎年、夏休みに『国立映画アーカイブ』で小中学生向けの上映の活弁をつけさせていただいているんですけれども、工夫して台本を書いて、工夫して語ることによって、『ワー』という反応をいただけて、弁士の語りによって、映画の素晴らしさや良さを伝えられてるんだなという瞬間をその時すごく感じるんです。弁士をやっていて、すごく良かったなと思います」

(尾田さんが登場する)

尾田 直彪さんの『活弁直送便』。満席の会場にライブの楽しさを届けます。

~映画『争闘阿修羅街』1938年/監督・八代毅~

【尾田 直彪さん】
「作品の良さをじゃましてはいけないと考えていますし、あくまで映画が主人公なので、『語り』はその良さを引き出すけれども、語りが前に出てはいけないんです。そこの案配をいつも考えながら台本を書いたり稽古したりするのはすごく難しいですし、まだまだ勉強しないといけないと思っています」

~映画『一心太助』1930年/監督・稲垣浩~

【高校時代の恩師 桐田 信一郎さん】
「一人で何役もしゃべるんですけど。演技もしながら体を動かしつつ、情熱的に語っているところを見て、声優も演技しながらやっているので(彼が憧れていた声優に)共通するところがこの職業にもあるなと思いました」

【尾田さんの友人 原口 雅隆さん】
「担い手が少ないので彼がものすごく頑張っているのをを見て、彼が希望だなと感じています」

【尾田 直彪さん】
「この活動写真はお客さまの『ワッ』という反応があって成立するところがあるのできょうはそういう反応をもらえてやりやすかったです」
「ライブで見ていただきたいです。ライブだからこそ、熱のある観賞体験ができると思いますし、ぜひ活弁だったり、無声映画に出合っていただきたいです」

尾田 直彪さん24歳。あなたの元に活弁の楽しさを届けます。

(尾田さんが練習している)
「人間は七転び八起き、いつかはこの土地に帰ってきて、俺の天下を作ってみせらあ・・・」

2月8日(土)午前11時から熊本市中央区の電気館で、尾田 直彪さんによる上映会『活弁直送便』が開催されます。玉名市出身の俳優・笠智衆さんが出演する映画が上演されます。

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