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16歳の旅役者の素顔に迫る 雷照九蘭の生きる道【熊本】

山鹿市出身の田中 蘭(たなか・らん)さん16歳。旅回り一座『劇団雷照(げきだん・らいしょう)』の一員、「雷照九蘭(らいしょう・くらん)」として全国の舞台に立っています。中学3年生のときにその世界に飛びこみ、今、何を思うのか。16歳の旅役者の素顔に迫ります。

(2/25福岡・大牟田市 大牟田楽笑演劇殿)
 約1カ月にわたって公演を続ける舞台は、人気の温泉施設に併設されています。

【雷照 九蘭さん(16)】
「(小声で)いつもはみんなが寝ている所まで行くんですけど・・・」
(みんな何時に起きるんですか)
「もうちょっとしたら、多分、起き始めます」
(それまで待ちますか)

「11時にちょっとした集まりがあって、11時半ぐらいから化粧し始めて、開始20分前にあいさつ」

劇団雷照の雷照九蘭さん、16歳です。旅回り一座の役者として全国の劇場を回っています。舞台に立つようになり、2年が過ぎようとしていました。

【雷照 九蘭さん】
「きょうの芝居は長いです。1時間半ぐらいはあります」
(九蘭さんの役は?)
「私は娘です」
「あっ!虫」
「ねえ!捕って捕って捕って捕って!」

『劇団雷照』は去年2月に旗揚げされました。雷照威吹姫(いぶき)座長は祖父、父ともに旅役者という家庭に育ちました。

【劇団雷照 雷照 威吹姫 座長】
「生まれた時からそういう環境なので、これがいいとか悪いとかじゃなくて、これしかやることがなかっというのもありますけど」

コロナ禍で大衆演劇界にも活動自粛の波が押し寄せる中、自分の力を試そうと父親が座長を務める劇団から独立。名前も変え、「雷照威吹姫」として全国を回っています。

【劇団雷照 雷照 威吹姫 座長】
「舞台から客席にかけての距離が近いというのと、毎日、演目や舞踊ショーも全部毎日変わるわけです。移動は大変ですけど、知らない土地に行って、大衆演劇をあまり知らない方にも見てもらってというのが醍醐味じゃないですかね」

 約1カ月間、同じ劇場で公演を続けるため、芝居の演目は毎日変わります。この日は『楢山節考(ならやまぶしこう)』。山奥の貧しい村に伝わる因習に従い、年老いた母親を背負い、真冬の山に捨てにいく物語です。自ら山に行く日を早める母とそれを黙って受け入れるしかない兄。2人の間で心を痛める妹を九蘭さんが演じます。

【雷照 九蘭さん】
「芝居は難しいなあと思うし、ずっと熊本で育ってきたので、いざ関西のお芝居しますとなっても言葉がまず分からなかったし、イントネーションとかやっぱり違うので、お芝居は難しいです」

幼い頃からよく家族と見に行っていた大衆演劇が大好きでした。しかし、「旅役者になりたい」と言ったとき、祖母は猛反対したといいます。

【雷照 九蘭さん】
「小学校1年生ぐらいから『役者になりたい』と言ってたんですけど、『もうなる』と言ったら、(おばあちゃんが)『出ていけ』みたいなずっとそんな感じだったんですけど」

10歳のとき、当時、山鹿市にあった劇場で親しくなっていた劇団の座長が舞台に上げてくれました。突然の出来事でしたが、戸惑いながらも役を果たし、旅役者への思いは一層強くなりました。

そして、中学2年生のときに雷照威吹姫座長が「劇団を立ち上げ、座員を募集する」ことをSNSで発信した際、九蘭さんはすぐに連絡を取りました。

【雷照 九蘭さん】
「あっ、チャンスが来たと思って、今だと思って、受験とか考えずに、もうこっちの世界に入りました」

九蘭さんの母・美紀さんです。この劇場で働いています。

【母・田中 美紀さん】
「私としては行きたいなら行ってもいいけど、せめて中学校卒業してからぐらいかなと思っていたんですけど、中学2年生の時に突然『2、3日のうちにもう行くけん』と言うけんですね。学校に話しに行ったんですよ。こういうこと言ってますけどと言ったら、『わあ、すごいことですね』『みんなで応援してあげましょう』と言ってみんな先生たちが協力してみんなで応援しましょうと。『自分の夢をかなえるためにしたいという、その気持ちが偉い』と言ってですね」

(山鹿中学校)
 中学3年生のときの担任、春木 真(はるき・まこと)先生です。今も九蘭さんの舞台を見に行ったり、相談を受けたりしています。

【3年生時の担任 春木 真 教諭】
「高校へ行くという進路が当たり前というのがどうしてもあるので。じゃあ高校はどうするんだろうとかですね。いろんなことがやっぱり考えられました。ただ、まあ、本人の思いであったりとかもう保護者もそれを精いっぱい応援したいということもあってですね。『頑張れ』と」

福岡での公演が休みの日には登校し、その日に卒業アルバムに載せる写真を撮るなどしました。

【3年生時の担任 春木 真 教諭】
「学校に登校するときは同級生も喜んで『おお、会える』と。帰って来たときは中学生らしさを楽しんでいるというか、今の中学生らしい、15歳の女の子という表情で過ごしていたので。本当まっすぐな性格で本当にいい子なんですよね。ステージに立っている生き生きとした表情とか見るとなんか頑張っているなとちょっとうれしかったですよね」

【劇団雷照 雷照 威吹姫 座長】
「すごく明るい子なので、その明るさも一つの武器ですしね。役者は早い時期から始めた方が絶対いいんですよ。身になるのがやっぱり絶対早いので。師匠が言うのもなんですけど、頑張っている方だと思います}

【母・田中 美紀さん】
「やっぱり本人が『夢をかなえるために行きたい』と言っただけあって、やっぱり舞台のときもニコニコして輝いて楽しそうにしているので、行かせてよかったなと思います」

【観客】
「きれいに踊っていました。成長したなと思って」
「大分から九蘭さんを見に来ました。笑顔が一番かわいい。踊っているときも笑顔ですてきだなと思って」

【雷照九蘭さん】
「夢を与える仕事じゃないかなと思います。旅役者なので、転々とするので、いろいろな地域のお客さんに出会うので、『きょうのお芝居よかったよ』とか『舞踊、良かったよ』と言われるようなみんなから愛される役者になりたいです」

旅役者・雷照九蘭さん。舞台に生きる16歳です。

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