熊本のニュース一覧

箱根駅伝王者が合宿 青学陸上部と水上村が進める新たな取り組み【熊本】

ことしの箱根駅伝を圧倒的な強さで制した青山学院大学・陸上競技部。新チーム最初の合宿先に選んだのは、人口2000人あまりの水上村でした。奥球磨の小さな村と
青学が共同で進める陸上イノベーションを取材しました。

【青山学院大学 陸上競技部長距離ブロック 原晋監督】
「原とですね、水上村が『ふるさと創生』という形の提携をさせていただきましてですね」「私も微力ながら水上村のお手伝いをしたいと、そんな思いがありました」

ことしの第100回箱根駅伝で大会記録を更新、2年ぶり7度目の総合優勝を飾った
青山学院大学陸上競技部。

学生長距離界の王者が熊本県内で初めての合宿地に選んだのが、「アスリートファースト」を掲げる水上村でした。

【水上村 中嶽弘継村長】
「第100回の箱根駅伝大会、本当にTVで観て感激いたしました」
「みなさんにとって(村の施設が)素晴らしい練習環境となれば幸いです。しっかりと体をいじめて練習して東京に帰っていただければと思います」
青山学院大学はこれまで水上村が主催する奥球磨ロードレースや奥球磨駅伝に出場。

原晋 監督が代表を務める一般社団法人「アスリートキャリアセンター」と水上村は去年6月、包括連携協定を結びました。

監督自身も村の地方創生推進アドバイザーに就任するなど関係が深まっています。

【青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック 原晋監督】
「いま(水上)村の人口が約2000人だと思いますけど、定住人口を求めるだけではなくて、交流人口・関係人口を増やすことによって、この水上村の社会的地位をもっともっと上げていきたいと思います」

【青山学院大学・田中悠登主将】
「この合宿が、新チーム一発目となる合宿なので、学年間でのつながりを大事にして、強くなって東京に戻れるように頑張ります」

総勢およそ60人が12日間滞在し、大自然に囲まれた環境でトレーニングに臨みます。
【田中悠登主将】
「これから練習を始めます」

舞台は標高1000メートルの『スカイヴィレッジ』です。スポーツを活用した地域振興に取り組む水上村が、大学や実業団の合宿誘致を目的に整備しました。標高が高いため酸素が薄く、効率的に心肺機能を鍛えることができます。ちなみに、TKUのニュースでランナーと並走している映像は主に取材するアナウンサーがダッシュでついていき撮影しています。

取材した日はスピード強化を狙った300メートル走。
合宿初日はほぼ全力に近いペースでほとんど休みなく10本を走りこみました。

【青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック 3年・佐藤有一選手】
「標高も高くてかなり追い込めていい練習になりました」(倒れこむ)「普段の練習と比べて倍くらいきついですね」(気合の入り方違う?)「違いますね。新1年生が
入ってきたので、いいところを見せたいなという思いで走ってました」

合宿中はルーキーも最上級生も関係なく刺激し合いながら午前5時すぎから夕方まで
3部練習に取り組みます。王者・青学の強さの秘密、猛練習を垣間見ることができました。選手たちが泊まるのは水上村にある温泉旅館『市房庵なるお』です。

事業承継先を探していた前の持ち主から原監督が去年買い受け再出発。
地下160メートルから自噴するアルカリ硫黄泉は温泉ファンのみならず高校・大学・実業団の合宿先としても愛され定着しつつあります。

【青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック 原晋監督】
「まず温泉なんですよね。激しいトレーニングをしたあとのケア、その一つに温泉で体をほぐすと。休息をとる意味合いがありますので」「食材もいい食材がありますからね。知られてないだけで、全国に自慢できるものはたくさんあります」

『なるお』の支配人を務めるのは青学OBの村井駿さんです。

【3年時6区20.8キロ 区間2位】
自身も原監督門下生として箱根駅伝の6区を走り、区間2位の好走で2015年の初優勝に大きく貢献。

【6年間一般企業に勤務】
卒業後は一般企業に就職し陸上の世界からは離れていましたが原監督から届いた1本のメールが村井さんの人生を再び大きく動かしました。

【なるお支配人 村井駿さん(青学OB)】
「(原監督から)『お前、九州支店長な』って一言メールが来ただけで、『えっ、それってなんですか?』からこのような話が始まりました」
「ビックリですね。『水上村ってそもそもどこなんだろう』と」
【青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック 原晋監督】
「人(柄)が一番いいのは誰かといったときに、すっと村井の顔が浮かびましたので」「特にこういったお宿の経営はその支配人の人柄によってお客さまがつくかつかないか、大きなポイントだと思ってます」「(地域に)溶け込んでね、村のために頑張ってほしい」

見知らぬ土地へのIターンで村井さんの第2の人生がスタート。

『なるお』で力を入れるのが「アスリート食」の提供です。

食品大手の『明治』と熊本保健科学大学が協力してレシピを開発。

【村で獲れた鹿肉などのジビエを盛り込むことも】
ランナーたちに必要な栄養がバランスよく摂れる食事となっています。

食べ盛りの選手たち、練習の疲れも見せずにどんどんと箸が進んでいきます。

【青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック 1年・佐藤愛斗選手】
「めっちゃおいしいです」(特に気に入ったものありますか?)「僕、肉じゃがが好きなので献立に出てうれしいです」

元アスリートの村井さんも後輩たちの成長を見守ります。

【なるお支配人 青学OB 村井駿さん】
「原(監督)ともう一度同じ(チームで)何かをやりとげたい気持ちもございましたし、新しいことへのチャレンジもしたい」「またこのような形で合宿の誘致であったりそういった形で陸上と携われる機会があったのでそこをモチベーションにいま頑張っております」

合宿終盤、選手たちは特別なトレーニングに挑戦しました。

原「いいなあ、いい感じだ」
西(ペースどうですか?)
原「いいリズムだね、先頭緒集団ね。オーバーペースになることなく指示通り後半にむけてグッと上げられるような、入り方をしてるからいいんじゃないですかね。いいトレーニングになるな!」

市房ダム湖畔の桜を眺めながら、少しずつ傾斜が急な登りに差し掛かっていきます。

「姿勢正しく、姿勢正しく!」「胸しっかり張って、張る!」

およそ11キロがすべて登りの難コース。

さすがの選手たちも息遣いが激しくなりますがそれでも前を向いてフィニッシュ地点を目指します。

「いや~いい練習ですよ。なかなかこういう練習するチームはいないと思いますので。まあ、激しいトレーニングを楽しくできましたね。仮想・箱根駅伝『山登り』です」

人口2000人あまりの村で進む陸上競技のイノベーション。水上村と青学の取り組みが世界を驚かせる日が来るかもしれません。

プッシュ通知でTKUの番組やイベントの
最新情報をお届けします!