熊本のニュース一覧

防災システム研究所の山村 武彦 所長と被災地へ【第2回】能登半島地震の現状と課題

発生から間もなく4カ月となる能登半島地震の被災地をTKUの記者が防災の専門家・防災システム研究所の山村 武彦 所長と一緒に取材しました。2回目は、石川県輪島市でボランティア活動を続けるNPO法人や、営業を再開したベーカリーを通して被災地の今を見つめます。

【NPO法人Vネット 川上 哲也 理事長】
「今、人の力が石川県内の被災地で足りていない。特に能登半島の北部では、人の力が全然足りていない」

震度7の揺れを観測した石川県輪島市の南西部にある門前地区です。4月5日、防災システム研究所の山村武彦所長と被災地で支援を続ける団体の代表を訪ねました。

【NPO法人Vネット 川上 哲也 理事長】
「洗濯のサービスは、この門前地区の全ての避難所でやっている」

岐阜県高山市のNPO法人Vネットの川上 哲也さんです。地震発生翌日の1月2日に石川県に入り、避難所に仮設の風呂や洗濯機を設置。また、重機を使った支援、いわゆる『重機ボランティア』としても活動しています。

【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「壊れた家から貴重品やかけがえのないものを取り出してくれる人がいない」

【NPO法人Vネット 川上 哲也 理事長】
「時間がたつと、熊本地震の時もそうだったと思うんですけど、屋根がやられていると、そこから雨が入って、家の中の物がだめになる」

川上さんは、熊本地震の発生直後、西原村に入り、重機を使って、倒壊した家屋から貴重品などを取り出す活動を行いました。今回の地震でも同様の支援を行っています。

この日は、門前地区で暮らす87歳の男性の倒壊した家屋で活動。重機を使って屋根をはがし、安全を確保しながら家屋の中に入り、男性が大切にしていた品を探していました。探すのは6年前に102歳で亡くなった母親の遺骨が納められた小さな箱。見つけるのは困難とみられていました。

【山村武彦所長】
「大変だな…」

【Vネット 川上 哲也 理事長】
「見つからないこともある」

【作業するスタッフ】
「あった、これだ!」
(拍手が起こる)

【Vネット 川上 哲也 理事長】
「出たよ、お父さん。あった」

【家主 中村 忠雄さん】
「ありがとう、ありがとう」

家主の中村 忠雄さんは倒壊した自宅を見て、取り出すのは無理だと諦めていたといいます。

【山村 武彦 所長】
「こういうボランティアがいてくれて良かったね。役所も来てくれないしね」

【Vネット 川上 哲也 理事長】
「公費解体の時に探すのはなかなか難しい」

支援を続ける川上さん。被災地でのボランティア不足が深刻だと指摘します。

【Vネット 川上 哲也 理事長】
「一般のボランティアも今、ものすごく少ない状況で、それが増えて、むしろ余るくらいに来ていただければ非常に復旧・復興が進むのに今のところ、そういう状況では全くない。3カ月たっても変わらない状況が続いている」

熊本地震では、発生から3カ月で延べ10万人余りのボランティアが被災地に入っていました。しかし、能登半島地震では、同じ期間に被災地の石川県に入ったボランティアの数は延べ1万4000人余り。圧倒的に少ない状況です。

【TKU 有田 和令 記者】
「輪島市の中心部です。倒壊した家屋が歩道を完全にふさいでいます。3カ月がたった今も多くの家屋が倒壊したままの状態となっています」

輪島市の中心部の町並みは、3カ月がたっても復旧とは言いがたい状況が続いていました。

こうした中、なりわいを取り戻そうと動き出している店がありました。輪島港の近くにあるベーカリー『ラポール・デュ・パン』です。

【山村 武彦 所長】
「営業再開を皆さん喜んでいるでしょう?」

【店主 鹿島 芳朗さん】
「そういう人が多くて、本当にありがたい。私たちも応援していただいて再開することができたので」

震度7の激しい揺れで、店内の物が倒れたり壊れたりしましたが、建物や厨房の機器に大きな被害はなく、2月中旬に営業を再開しました。

店主の鹿島さんは3月、地震で犠牲になった友人を悼んで、新しいパンを作りました。

【店主 鹿島 芳朗さん】
「パンを通じて亡くなった翔太さんが生きた証し、思いをつなぐことができたらいいなというところがスタートだった」

友人の名は、末藤 翔太さん40歳。地震で倒壊した家屋の下敷きとなり帰らぬ人となりました。末藤さんは熊本市出身で、妻と一緒に2年前に輪島市に移住。地域おこし協力隊の一員として、地元の高校生への学習支援を行っていました。

【店主 鹿島 芳朗さん】
「地域の高校生に、夢を持って地元で仕事をする、それに向かっていく希望というものを翔太さんなりに生徒に伝えていた」

新作のパンは、末藤さんが好きだったパンをベースにクルミやレーズンなどを入れ、リング状に。フランス語で「つながり」や「縁」を意味し、店の名前にも入っている『ラポール』と名付けました。

【店主 鹿島 芳朗さん】
「毎日作り続けるパンなので、作るたびに翔太さんのことを思いますし、いろんな輪が広がっていけばいいなという願いを込めて作っています」

地震で犠牲となった友人の思いをパンを通して伝え続けます。

プッシュ通知でTKUの番組やイベントの
最新情報をお届けします!