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すべてが手作り 少年と母 ふたりの神楽道【熊本】

熊本市の小学生、千田 栄樹 (ちだ・えいじゅ)君、9歳。神をまつるために舞う神楽の魅力にはまっています。神楽団体には所属せず、面や剣などは栄樹君、衣装はお母さんの手作り。ふたりで歩む神楽の道です。

(道の駅波野神楽苑/阿蘇市波野・去年10月 第32回神楽フェスティバル)
神楽の舞です。勇壮で、優雅な舞で神話の世界を表現しています。

去年10月、阿蘇市波野で開催された『神楽フェスティバル』。熊本、大分に加え、島根県の石見神楽が特別出演。計9つの団体が伝統の舞を披露しました。

地元の中江岩戸神楽保存会が披露した『天の〆(てんのしめ)』。竹を登った舞い手から餅がまかれ、客席を沸かせました。

熊本市の千田 栄樹 君、9歳。神楽の大ファンです。

【千田 栄樹 君(9)】
「面を着けたら、神様になれるところがかっこいい。タブレットで動画を見ていたら、神楽面の職人さんの動画が出てきて、それを見て職人さんたちに会いに行って、好きになっていった」

母・洋子(ようこ)さんです。栄樹 君が「神楽が見たい」と言えば、県外まで足を延ばします。

【母・洋子さん】
「小さい時から獅子舞とか龍とか仏像とか大好きで、動画でいろんな県の獅子舞を見始めて、そこから神楽に入っていたんです。私自身は神楽の存在を知らなかったので、よく分からないまま連れて行かれるみたいな」

家は神楽でいっぱいです。

【千田 栄樹 君(9)】
「これが神楽のときに使うお面です」

神楽面や剣(つるぎ)などは栄樹君の手作りです。衣装は洋子さんが作りました。

【母・洋子さん】
「全部あのなんちゃってのコスプレのような衣装ですけど、雰囲気は味わえるかなと思って、ちょっと作ってみました。こういうもの(手甲)があったんですけど、『赤じゃないといやだ』と言ったので、赤で作り替えたりとか、脚半、すねに当てるものがどこにも売っていなかったので作ったりとか」
(お母さん、何でも作りますね)
「ない物は全部作れと思って」

【千田 栄樹 君(9)】
(ここは何ですか?)
「神楽殿です。神楽を舞う所です。真ん中に岩戸があって、下にヤマタノオロチ(大蛇)がいる」

栄樹君はおととしから母・洋子さんが運転する車で往復約4時間かけて、阿蘇市波野に通っています。

中江岩戸神楽の舞を練習しています。

しかし、『波野に住んでいること』などの条件があり、神楽の舞台には立てません。  

【母・洋子さん】
「伝統の継承ってすごく難しいんだろうなと思いながら、定期公演を見に行くと、一緒に練習している子たちが舞っているのを見ると、なんかこうグッとくるものがあるんですよね。すごく大好きで練習しているのに、あそこに立てない。それでもずっと『練習に行きたい』と言うので。やりたいということを応援することしかできないので『波野の神楽男子がかっこいい』『あのお兄さんみたいになりたい』と憧れを抱いているので、このままの気持ちを大事にしたいと思っています」

(去年8月/熊本市西区北岡神社)
去年の夏、うれしい出来事がありました。神楽が大好きな栄樹君のことを知った北岡神社の宮司が夏祭りに披露の場を用意してくれました。

【千田 栄樹 君】
「間違えずに頑張りたいです」

【母・洋子さん】
「喜ぶと同時に『神楽は1人じゃ舞えない』と言い出して、その後に(宮崎県)高千穂と延岡の神楽を見に行ったときに1人で舞われていたのを見て、『自分もやれるかもしれない』と言うので」

【北岡神社 宮司・井芹愼一郎さん】
「一生懸命を練習して、そして、神様に奉納する神楽の舞を一生懸命やられている姿に本当に感銘を受け、こちらからお願いした次第です。いい神楽の舞い手になっていただきたいと思います」

【祖父・千田 良一さん】
「いつも無家で見ていますけど、きょうは衣装を着てやるもので、どういう格好になるのかなと思って、楽しみです」

おじいさんとおばあさんも見に来てくれました。

1年かけて練習した神楽の舞を披露する初めての舞台です。

舞うのは『神逐(かみやらい)』です。

【解説/千田 栄樹 君】
「スサノオノミコトという神様が天上界で悪いことをいっぱいして八百万の神様たちがスサノオノミコトを天上界から追放するという場面です。足を上げるところが難しい」

【母・洋子さん】
「頑張ってるなと。やっと舞台に立つことができたなあという感動ですね。知り合いだけが来たわけではなくて、全く知らない人たちが見に来てくださったので、すごいうれしいと思いました」

【千田 栄樹 君】
「うれしかった。ステップがきつかった。かっこよく踊れる舞い手になりたいです」

(神楽フェスティバル)

【母・洋子さん】
「これはゴールではなくて、スタートとして考えたいと思っていて、もうちょっと工夫して、皆さまに楽しんで見ていただければいいなと思いました」

いつかは自分もこの舞台に立ちたい。思いを募らせる栄樹君です。

(4/20 熊本市南区 河尻神宮春季大祭)

熊本市の河尻神宮の春の大祭で、栄樹 君が舞うことになりました。

栄樹君は去年の夏から身長が20センチも伸びていました。前の衣装は小さくなったので、洋子さんが今回のために新しい衣装を作りました。

【母・洋子さん】
「日本の神話のストーリーがあって、神様がいて、お面を着けて舞うのが好きなので、イベントやお祭りとかで舞わせていただけるような場を見つけていけたらと思います」

【千田 栄樹 君】
「ちょっと間違えたけど、トラブルとかなくて、よかったです。いっぱい神楽を舞って、いろいろな人に知ってほしいです」

【母・洋子さん】
「全て手探りなので、本当にこれで合っているのかなと思うことが多々あるんですけど、全力でサポートしたいと思っています」

神楽を愛する千田 栄樹 君。

栄樹君を愛する母・洋子さん。

ふたり。

神楽の道を歩んでいます。

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