2014年10月の一覧
私が報道の現場に飛び出したのはいつぞやの10月1日。
1年たった10月1日には「現場回って1年経ったなぁ」と
一人感慨深くもないささやかな満足感をかみしめたものです。
しかし5年が過ぎ、6年が過ぎ…
10月を意識することは無くなりました。
でも10月はやっぱりスタートの月。初心に帰るべき月。
たまに読み返すメモがあります。
それは記者1年目が過ぎた頃に受けた警察担当記者研修。
中継でしか言葉を交わすことがなかった
安藤優子キャスターにビシッと叩き込まれた教えのメモ。
「リポートはカッコをつけるものではない。
でもカッコつけたくなるのが人情。
肝心なのはカッコつけないこと。
体裁を整えようとすると、何を伝えるのかではなく、
『自分がどう映るのか』になってしまう。
『自分がどう映るか』を気にしてしまう。
『自分がどう見えたいか』となると、
リポートは空疎なものになってしまう。
『私にはどう見えたいか』となってしまうんです。
現場で今、何を伝えようとしているのか、
何を伝えるべきかという原点に返るべき」
突発の現場でそこそこリポート数をこなし、
中継にもどことなく慣れてきたペーペーに刺さった言葉です。
ガーンですよ。その衝撃。
そしてもうひとつ、「安藤さんは現場の私たちが答えにくい
質問をされますが…なぜですか?」と尋ねると
「なぜ現場の記者に問いかけるのかというと、
原稿などの一次情報で私は知っていることがありますが、
視聴者は知らないことがあるからです。
そのリポートで視聴者が理解できるのかと思うことがあるから。
だから現場に聞く。その原稿、そのリポートでわかるのか?
私の聞いたことが分からなかったら、
ほかのことを喋る方法だってあるんです。
リポートに対する突っ込みは、たとえば
・発生間もなければ雑感・事案の構図・時間帯がどうなのかなど。
・基本的な現場のデータ(地理や現場の土地鑑)
・現場付近のランドマーク、位置関係(全国の人へ伝えるため)は基本。
視聴者と一緒に動く感覚で。画面は生きている、息をしている。
だから映像に現場の空気感を。それが視聴者に伝わるから」
ガツン!ガツン!の衝撃でしたが、実はこれ以後、熊本発生の
中継では安藤さんの容赦ない掛け合いが増えた…のは本当です。
それだけ心して準備をして中継に臨めという教え。
通常は「スタジオとの掛け合い」と言われますが、
系列記者の中ではこれを「安藤ラリー」と呼んでいます。
どんな問いかけが飛んできても、落ち着いて返す。
懐かしいメモですが、今も大事なバイブルです。
写真=まだ初々しいころの熊本です。
番組のお知らせです。
第11回熊本暮らし人まつり みずあかり
〜市民が灯す特別な夜〜
10月18日(土)深夜1時5分放送です。
2日間の日程は台風で一夜限りに。
きらびやかな映像を綴るべく
6台のカメラでビシッと撮ったあかり。
ディレクター&ナレーションを担当しました。
週末の深夜、ぜひボーッと癒されてください。
シネマカメラ&一眼レフでみずあかり特番を攻めました。
残念ながら1日だけの開催でしたが、
頭を切り替えて台風モードへ。
明日は3時過ぎから台風遊撃班です。
無理せず、侮らず、
一緒に動くクルーを無事に帰宅させる。
もちろん現場リポートも大事。
しかし、伝えることより大事なのはそこ。
大げさ過ぎる、何もなかった!と言われることもありますが、
災害は蘊蓄や机上で全く予測できません。
初動は大きく、ケガ無く事故無く被害なく。
行ってきます。
今朝、我が家に届いた大きな宅配便。
荷物は新米の米袋。ひとめぼれ。
荷札の住所は宮城県石巻市。
3年半前、東日本大震災FNN取材団で担当した石巻。
瓦礫に埋もれた路地で出会った被災者、
菊地さん一家からです。
近所で持ち寄った食材で煮炊きをしながら
救援を待つ姿を取材した際に、
暖かい豚汁をとにかく食べなさい!と声をかけて下さいました。
凄惨な現場で、一瞬だけ緊張が和らいだのを思い出します。
「4年振りにやっと収穫できた新米、子供に食べさせて下さい」
やっと再建した自宅。
田畑を埋め尽くした瓦礫の撤去。
海水に浸かった田の土壌復旧。
田んぼが復興住宅の宅地にかかった話。
「田んぼの小石を拾うだけでも大変で」と聞くと、
箸で掴む米一粒に重みを感じずにはいられません。
農業者の誇りを取り戻す第一歩の味。
朝から目頭が熱くなる贈り物でした。